自然素材と暮らすということ。五感で感じる、住まいのやさしさ #column
目に見えない心地よさに、価値がある
木の香り、漆喰の手触り、足裏に伝わる無垢材の温もり。自然素材に囲まれた住まいは、目に見える美しさだけでなく、五感をやさしく満たしてくれます。
けれどその一方で、憧れだけで飛び込んでしまうと「思っていたのと違った」と後悔する人も少なくありません。
自然素材の家は、単なる選択肢ではなく、暮らし方の姿勢そのもの。今回は、その魅力と注意点、上手な付き合い方について、丁寧に紐解いていきます。
この記事でわかること
- 自然素材の家の特徴と魅力
- 見落としがちなデメリットと注意点
- 後悔しない素材選びのコツ
- 暮らしに合った自然素材との付き合い方
自然素材の家とは?
「自然素材の家」とは、化学物質を極力使わず、木・土・紙など自然由来の素材を中心に構成された住まいのこと。
代表的な素材は以下の通りです:
- 無垢材:床や柱などに使用される、木そのものの質感が生きた素材
- 漆喰(しっくい):石灰を主原料とし、調湿・抗菌性能に優れる塗り壁材
- 珪藻土(けいそうど):植物性プランクトンの化石からなる壁材で、調湿・消臭効果あり
- 和紙:障子や照明などに用いられ、柔らかな光を演出してくれる伝統素材
自然素材は、そのまま「環境にやさしい」だけではなく、心地よさや風合いといった“情緒的な価値”を住まいにもたらしてくれるのが魅力です。

自然素材でつくる心地よい暮らし
空気がやさしく整う
自然素材の家は、室内空気の質がとても高くなりやすいと言われています。ホルムアルデヒドなどの有害物質を含まないため、シックハウス症候群のリスクも低減。
さらに、漆喰や珪藻土には調湿効果があり、湿度が高いときには吸い取り、乾燥すると放出。人にとって快適とされる湿度40〜60%を自然と保ちやすくなります。
夏は涼しく、冬はあたたかく
無垢材や土壁は、断熱・蓄熱性能に優れているため、夏はひんやり、冬はほんのりとした温もりを感じられる環境に。
床暖房がなくても足元が冷えにくく、エアコンの効きも良いため、省エネ効果にもつながります。
住まいとともに歳を重ねる
自然素材は「経年変化」が大きな魅力。無垢の床は、年月とともに飴色に変わり、暮らしの記憶を刻んでくれます。
少しの傷や凹みも“味”に変わる。住まいと一緒に時間を過ごし、育てていく感覚が味わえます。
気をつけたい点もしっかり理解
メンテナンスは必要不可欠
自然素材にはメンテナンスの手間が伴います。
- 無垢材:キズ・シミがつきやすいが、サンドペーパーやオイルで補修可能
- 漆喰:一部のひび割れは起こりやすいが、上塗りやパッチ補修で対応可
愛着を持って手入れしていける人には、むしろ楽しさとなるかもしれません。
コストとのバランスをとる
自然素材は、量産された建材に比べて材料費・施工費ともに高くなる傾向があります。予算に限りがある場合は、次のような工夫を:
- 手に触れる部分だけ自然素材にする
- 見せ場となる壁だけ漆喰にする
- 和室や玄関に一部和紙や無垢材を取り入れる
素材の選定と使用範囲のバランスで、費用対効果の高い住まいが実現します。
素材ごとの特性に注意
自然素材は「生き物」のような存在。湿度や気温に影響を受け、反ったり膨張したりすることがあります。
たとえば、無垢材の建具は季節によって開閉具合が変わることも。それを「不便」ととらえるか、「季節と寄り添う味」ととらえるかは、暮らす人次第です。
後悔しないためのチェックポイント
- 素材の見た目だけで選ばない:風合いは大切。でも、それが暮らしにフィットするかは別問題。
- 暮らし方と相性を考える:小さなお子さんやペットがいる場合は、キズや汚れをどう受け止めるかも重要です。
- メンテナンスも楽しめるかどうか:素材と長くつき合うには、手入れへの前向きな気持ちが必要。
- 信頼できる施工者に出会う:自然素材の扱いに長けた設計士・工務店のアドバイスは、何より心強い味方になります。
まとめ
自然素材の家は、目に見えない豊かさを暮らしにもたらしてくれる存在です。
木の香り、漆喰の白、足に伝わるぬくもり。それらは単なる機能やスペックでは測れない、“感覚のよさ”を住まいにもたらします。
けれど、その魅力を最大限に味わうためには、「メンテナンスも愛着の一部」と受け止める姿勢や、自分たちにとっての心地よさをきちんと見極める目が必要です。
こだわりすぎず、でも、妥協しすぎず。そんなバランス感覚こそが、自然素材と上手につき合うコツなのかもしれません。