動線が悪い家は“見えないストレス工場”──暮らしの質は「間取りの流れ」で決まる#column

表面の美しさより、毎日の「動き」を見よ!

▼この記事でわかること

  • 「生活動線」とはどんな概念か
  • 動線が悪いことで起きる日々のストレス
  • モデルハウスでしか気づけない“暮らしのリアル”
  • 間取り設計で優先すべきポイントとは?

はじめに:「なんとなく良さそう」が一番キケン

家づくりをするとき、誰しも夢がふくらみます。

吹き抜けのリビング、大きなキッチン、南向きのバルコニー。
でも、それだけじゃダメなんです。

“どう動いて生活するか”──この視点を抜きにして間取りを決めてしまうと、見た目は理想でも、住んでみたら不便だらけ…なんてことにも。

この記事では、そんな「動線迷子」の家で起きた出来事を通して、本当に快適な家づくりのヒントをお伝えします。

【Case 1】玄関から風呂まで100歩…帰宅のたびに足取りが重くなる

都内近郊に家を建てたばかりの桜井さん一家。

ある日、次男の翔くん(小2)が雨の中、ずぶ濡れで帰宅。

「ただいま!お風呂入っていい?」

その声と同時に、靴のまま玄関を飛び出した翔くんが向かったのは──廊下、リビング、ダイニング、そしてやっとの2階バスルーム。

…床にできた濡れた足跡の道筋を見て、母・彩さんはつぶやきました。

「どうしてお風呂がこんなに遠いんだろ…」

家の中心にリビングを据えたおしゃれな設計。でも、帰宅後すぐに浴室にたどり着けない間取りが、地味なストレスとして積もり始めていたのです。

【Case 2】洗濯動線がトラップだらけ──重いカゴを持って行ったり来たり

晴れた平日の午前10時。

洗濯機から洗い上がった洗濯物を持ち、彩さんはベランダへ。…といっても、そこは2階。

階段を上がり、物干しスペースに干し終えたら、夕方には1階に降りて畳み、子ども部屋(2階)と寝室(1階)にまた運ぶ──。

「1回の洗濯で階段を6回も使うって、もはや運動部だよね…」

そう思ってしまうのも無理はありません。

「水回りの配置が便利かどうか」──これは、図面を見ているだけでは実感できない“暮らしの実態”のひとつです。

white textile on blue plastic laundry basket

【なぜこうなった?】設計時にすり抜けた「暮らし目線」

桜井さん夫妻が家を建てたとき、設計段階でしっかり打ち合わせはしていました。

「明るいリビングがいい」
「アイランドキッチンは絶対」
「外から見たときの印象もこだわりたい」

でも、“どんな順番で何をするか”という「動線」の話は、なぜかあまり登場しませんでした。

設計士からの提案も、見た目のレイアウトや最新設備が中心。生活の“流れ”を重視したアドバイスはほとんどなかったのです。

【Before You Build】体験なくして後悔なし

図面やパースで「いい家だ」と思っても、それはあくまで“静止画の魅力”。

でも、実際の暮らしは、朝の慌ただしい時間、帰宅後の動き、洗濯や掃除といった“日々の流れ”で構成されています。

だからこそ、複数のモデルハウスを実際に歩いてみることが欠かせません。

  • 洗濯機→干す→たたむ→しまう、がワンフロアで完結してる家
  • 玄関→手洗い→浴室が一直線につながる帰宅ルート
  • キッチンからパントリーまで直結で、買い物後が楽な家

こういった“使ってみて初めてわかる”ことが、体験には詰まっています。

【チェックリスト】あなたの「生活動線」、ここを見直そう

家づくり・リノベを考えている方は、以下の点をチェックしてみてください。

☑ 洗濯〜収納まで、階段の往復が必要?
☑ 帰宅後すぐに手を洗える動線になっている?
☑ 食材や日用品の買い出し後、パントリーまでの距離は?
☑ 家族全員の「朝の支度ルート」が重ならない設計か?
☑ 将来的に子どもが自分で動ける距離感・導線になっている?

このチェックを持ってモデルハウスを見学すると、間取り図では見落としていた“気づき”が得られるはずです。

おわりに:「間取りの形」より「暮らしの流れ」

家を建てるときに後悔する人の多くが口にするのが「もっと動線を考えておけばよかった」という言葉です。

1日10分のムダが、1年で約60時間、10年で600時間──およそ25日間、動きにくさに費やす計算になります。

“素敵な家”は、「見た目」ではなく、「動きやすさ」で決まる。だからこそ、未来の自分たちの暮らしを想像しながら、実際に“動いてみる”体験が、最高の家をつくる第一歩なのです。